こんな時に鍼灸

病名は「肩関節周囲炎」
肩関節周囲の炎症ということで、非常にあいまいな病名です。

原因は解明されていませんが、加齢による筋肉の減少(だから四十、五十肩)と言われています。
そして、肩関節特有の問題も。
普通の関節は、骨と骨の凸凹をはめ込む形になっているのですが、肩は凹がほとんどありません。
凹が浅いので、いろんな方向に動くことができます。
その緩い噛み合わせをつなぎ止めているのが肩の筋肉なので、かなりの負担がかかっています。
その一部が弱くなると、周りの筋肉が支援をするのですが、支援する筋肉も通常以上の負担で疲労していきますので…
というように、どんどん広がっていってしまいます。

また、風邪などで喉の調子が悪くなってから…なんてこともあります。
(肩、腕の神経は喉の部分から出て来ますので、喉、鼻と非常に仲良し)

軽度の場合は、肘への鍼一本で腕が上がることもあります。
ただ、鍼灸院に来られる方は痛くて痛くて我慢できなくなってから。
それでも、1回の治療で動く範囲がぐっと広がります。
ただ、元に戻りやすいので間隔を詰めた治療&自宅でのストレッチが必要となります。
放っておいても長くて1年ぐらいすれば痛くなくなりますが、痛いまま動かしていると、痛みがひいても動く範囲が狭くなる可能性があります。(特に利き腕は危険)

ですので、痛いのを我慢する前にいらしていただければ、早く楽になれます。

変形性膝関節症の方が多いですので、こちらのお話を。

膝関節は長年体重を支えてますので、すり減ったりする場合があります。(姿勢や歩き方で差が出ます)
が、変形すると痛いか?と言えば…全く痛みのない人も多くいらっしゃいます。
ということで、関節の変形が痛みの原因とは言い切れません。

何度か説明していますが、骨は痛みの原因になりにくいです。
筋肉・筋膜が原因である場合が多いです。
ですので、原因として多いのは腰や足と言った隣の関節の筋肉や、背中の筋肉です。
他にも、内臓が原因の場合もありますので治療方法は様々です。

また、膝に水がたまるという方もいらっしゃいます。
抜いても抜いても水がたまる…
水がたまる原因は膝関節周りの炎症(傷)です。
擦り傷で、傷口から体液が出てくるのと同じ原理です。
いくら水を抜いても、傷はそのままなので止まるはずありません。
これには、「お灸」がよく効きます。
自宅で「せんねん灸」をしていただくことで、再発も抑えられています。 

股関節、鼠径部が痛いという方で、病院で検査をしても原因がわからない…
画像診断、血液検査でわからないとなると、残るは筋肉です。

足の付け根である鼠径部。かなり多くの筋肉・筋膜が絡んできます。
上は腹筋から、下はすねの筋肉。
お尻や背中からの筋肉もあります。

こちらも、時間の経過とともに広がっていきます。
ですので、治療を進めるに従っての治療箇所が変化していきます。

筋肉的には膝に近いのですが、膝関節とは異なり股関節は安静にしないと休めません。
膝は伸ばし切ると力がいらないようにできていますので、実は立っていても休めます。
が、股関節は立ち、歩く限り必ず筋肉が動きます。
なので、どうしても膝よりも治療回数が必要になります。

それでも、治療毎に楽になる事を実感できると思います。

先進国では8割の人が腰痛との統計もあるので、ほとんどの人が経験しているはずです。
が、腰痛で鍼灸院に来られる方よりも、他の症状で来院されて腰痛を治療する人の方が多いです。

治療しているときに首→背中→腰と見させていただくと、腰を触った瞬間にわかります。
「痛いでしょう」
「えっ?? 痛いです!! なんで??」
となります。
と言うように、ほとんどの方は我慢されているようです。

では、腰痛の原因は…
 1.内臓(消化系の不調や、むくみ等)
 2.炎症(熱が出ます)
 3.骨の変形(器質性)
 4.筋肉の凝り(機能性)
などがあります。

※腰痛学会から腰痛の8割が心因性と発表されました…が、法律関係の方から話を聞きました。
 腰が痛いけど理由が???でも診断書を書かないといけない…
 →え~い、心因性にしちゃえ!!
 と言う裏事情もあるとかないとか…
 
2、3は診させてもらった後、病院での検査をお願いしています。場合によっては手術ですぐに楽になる場合もあります。 
1も急性の場合はすぐに病院です。慢性の場合でも病院の検査をお願いします。
 (理学検査ができないのが鍼灸院のつらい所。なので病院を利用させてもらいます。)

また、
 ・痛みやしびれとともに足が冷える。
 ・じっとしていても痛い
場合も、病院での検査が必用です。
大きな病気の早期発見につながることもあります。

すると、鍼灸院では4と、1の慢性(病院では治療方法がない場合)だけになります。
1,2,3は病院で治療できるはずなのですが、難しいようですね。
それでも治らないということは、原因が違うということです。

反応点では、筋肉(筋膜)だけでなく、内臓も含めた全体を診察します。
また、先ほど「じっとしていても痛い」とありましたが、じっとしていても動いてる筋肉があります。
ですから、病院の検査で異常が見つからない場合は鍼灸へいらしてください。
腰痛の原因は非常に多岐にわたります。

これらの疾患は、すぐに良くなる方もいれば、良い状態が続かない方もいらっしゃいます。
私の経験からすると、めまい→耳鳴り→難聴と移行される方が多いです。
このように症状が変化してこられた方は、かなりの時間が経過しているので元の状態に戻るのは難しい。
治療後しばらくは状態がよくなっても、また悪くなる…

ご自身でも治療をしていただく必要性が高く、根気のいる治療になる場合が多いです。

骨折としていますが、鍼灸で骨がつくわけではありません。
骨折時、鍼で骨に微小な振動を与えてあげると、接合が早まるという話もあります。
ただ、骨の痛みはそれほど大きくありません。
骨折時の痛みのほとんどは、骨の周辺組織の損傷から発生しています。

ここでは、骨折でも「いつの間にか骨折」についての症例です。

この「いつの間にか骨折」。
その名の通り、知らないうちに骨折している状態です。
背骨の圧迫骨折などはその代表例。
痛みがあればわかるのですが、「いつの間にか」という名の通り、痛くない場合も多々あります。
ただ、痛みがある場合は起き上がることも困難な状態に。

骨が折れてるのになのに痛くない場合がある!!ということは、骨が痛みの原因でないということです。
となると、原因となるのは筋肉・筋膜ですので鍼灸の出番になります。


実際には、骨折状況の確認のために整形外科へ通院、検査を併用していただきます。

科学の発達により、脳内の血流量や酸素消費量等が映像で見られるようになりました。
その機械を使い、鍼施術中、後の脳を観察すると、血流量の増加、酸素消費量の増加が確認されています。
このことは、脳内に酸素や栄養が行き届き、代謝が活発になっていることを示します。

研究結果の論文でも、
・レビー小体型認知症における認知機能や幻視の改善と日常生活動作の改善
・鍼治療と生活指導による、認知機能低下の比較
等が報告されています。

近年、「病気」として扱われるようになったものですが、中医学では「気滞」「鬱滞」と診断するように、昔から病気(まさに気の病)として扱います。

認知症にも書いていますが、機器の進歩により鍼による脳への影響が続々と観察されています。
ラットでの実験では、鍼治療で脳内のセロトニンやドーパミンの変化が観察されており、鬱などに効果がある(薬との併用で効果が上がる)というように、脳への影響がいろいろと観察されてきています。

わかりやすい例では、「鍼灸治療を受けると眠たくなる」という現象があります。
今流行のヘッドマッサージで、マッサージ中に熟睡するというのは、鍼灸師であれば日常見ている現象です。
鍼灸では、頭だけでなく首や肩への治療でも見られる現象で、首や肩の凝りによって圧迫されていた血管が解放されることにより、脳内の環境が改善されるためだと思われます。
また、鍼灸では交感神経活動の低下(俗にいう副交感神経優位)も確認されています。

また、同時に起きる不定愁訴も、昔から鍼灸の守備範囲です。
体の不調の軽減が気持ちの向上をもたらしてくれるので、前に進む力になるのだと思います。


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